あいしゅくんと唐揚げ定食

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元気は漣の膝にトレイを乗せた。 「あいしゅくん。ここに乗せていくの?」 「そうだよ。大きい唐揚げを狙おうね!」 「うん!」 「漣くん行くよ!用意はいい?」 「ラジャー!」 敬礼のポーズをしながらはしゃぐ漣。 つられて元気も調子に乗る。 「唐揚げ定食ゲットの旅に出発~!!」 「お~!!」 拳を振り上げる元気と漣。 2人は最初からバカップルだった。 「漣くん、ここでおかずを選ぶんだよ。どれにする?」 カウンターが高すぎて、車椅子に乗っている漣にはよく見えない。 「見えないよ」 元気は漣の後ろに回り、脇の下に手を入れて漣を持ち上げた。 「よいっしょ!」 「あっ、見えた!」 「決めた?」 「どれにしようかなぁ~」 「漣くん!!重いっ!!早くっぅ!!」 「これにする」 元気は漣が指差した皿を取り、膝の上のトレイに置いた。 「あいしゅくんと同じにところに置くんだよ。ふふっ」 漣は初めての定食が楽しいのか、元気と同じ配置に皿を並べた。 「はい。いらっしゃい。大盛もあるよ!」 ご飯担当の食堂のおじさんだ。 「大盛ぃ~!」 「少な目で」 「1年生?たくさん食べてね」 この食堂のおじさんこと津曲さんとは、卒業までの6年間に多くの思い出を作ることになる。 教師に言えない悩み事の相談など、公私に渡ってお世話になるのだ。
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