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「有栖川くんは、毎日走って学校に来るよね」
秀人がチクリと意地悪を言ってみた。
「うっ…」
元気は胸が痛い。
「羨ましいなぁ」
箸で唐揚げを突っつきながら漣がつぶやく。
「遅刻が?」
「ちがうよ。走ることだよ」
「漣くんも、さっき走っただろ」
秀人も先程の漣の感動に酔いしれている。
「うん!スゴく気持ちよかった!」
「食べたら練習だからね」
「はい!頑張ります!50メートル走れるようになって、体力測定で1位になるんだ」
「こりゃまた大胆な目標ですね。その為には残さず食べて下さいよ」
拓真は漣のトレイをツンツンと指差す。
漣はまだ半分も食べていないのだ。
「お腹いっぱい」
「こらこら。きちんと食べなさいって、東山先生が言ってたでしょ。ダメですよ」
「タクくんコワい。う~ん。しっかり食べても丈夫な筋肉できないし、運動しないから太っちゃうもん。俺ね、筋肉がダメになって関節がカチカチになっちゃうんだ。だから、東山先生の話もスゴくイヤだった」
「バランス良くしっかり食べることが大切なんだよ。座ってできる運動もあるし太らないよ。もし太っても、漣くんを嫌いにならないから安心して食べなよ」
「ホントに嫌いにならない?」
「ならないよ」
慧は優しく頷いた。
「サトくんって何でも知ってるんだね。スゴいね」
漣は尊敬に似た思いで慧を見つめる。
「おいら歯医者の息子だからね。父ちゃんがいつも言ってるんだよ。だけど、きちんと食べないと嫌いになっちゃうぞぉ」
「えっ!?ヤダ~!!食べます。食べます」
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