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「やっぱり、靴履き替えなきゃダメ?俺の場合関係ないと思うんだけど」
漣は自分の足を覗き込みながらボソッと言った。
元気は漣の前に屈みこむ。
「れ~んくん。外に行くんだから履き替えようね。手伝ってあげるよ。シューちゃん、漣くんの靴ちょうだい」
元気は上履きを脱がせようとして漣の足に手を触れる。
「イヤ!!」
漣が叫びながら元気を押し倒した。
力一杯に押された元気は背中から床に落ちた。
「いてっ!!漣くん、痛いよ!」
元気は驚いたが漣の喜怒哀楽の激しさに慣れたこともあり、すぐ正気に戻った。
「ビックリしたなぁ。漣くん、力強いね。飛ばされちゃったよ」
優しい笑顔を見せ、俯く漣の顔を覗き込んだ。
「見られたくない…」
漣は両足首の曲げ伸ばしができない。
爪先で歩いていたのはそのせいである。
また右膝が内側に曲がっているので、歩く時に足首に負担がかかっていた。
そのため右足首は内側に曲がったまま拘縮している。
「有栖川くん、俺に任せて。ちょっと靴持ってて」
秀人は漣のシューズを元気に渡すと、慣れた手付きで漣の足首を持ち上履きを脱がせ始めた。
「秀人くん…」
「気にするな。嫌なことは無理にやらなくてもいいから。ねっ」
秀人は無理に笑顔を作った。
元気は立ち尽くしていたが、拓真に肩を叩かれ我に返った。
拓真は元気を見ると口の端を緩め、目を閉じて2度頷いた。
そして元気の腕を掴み漣の前に立たせた。
元気は優しく声を掛けた。
「漣くん、ごめんね。でも、見せてほしいな」
「イヤだ…」
「どうして?」
「やめろよ!漣くんはイヤがってるだろ。漣くんの気持ち考えてやれよ!」
秀人が目に涙を溜めて叫ぶ。
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