1000人が本棚に入れています
本棚に追加
「へぇ。漣くん妹いるんだ。甘えん坊だから末っ子かと思ってましたよ」
「タクくん。誰が甘えん坊なのさ?」
プイっとスネる。
自覚の無いところが甘えん坊の証明だ。
「おいらも、漣くんは末っ子だと思ってた」
「サトくんもヒドい。秀人くんが一人っ子の甘えん坊さんなんだよ。分かんないかなぁ」
誰が見てもぶっちぎりの甘えん坊は漣だ。
甘えん坊なのか甘え上手なのかは別にして、甘やかされ放題の6年間を過ごすのだ。
「秀人くんって一人っ子なんだね。おいらは姉ちゃんがいるよ」
「俺も一人っ子です」
「俺は5年の弟がいるけどケンカばかりだよ」
「お兄ちゃんと妹。お兄ちゃんも薫風で今年高校を卒業したんだよ」
漣の両親と兄もこの学校の卒業生だ。
「お兄さんはどこの大学に進学したのですか?」
この一言が拓真のこれからを大きく左右することになる。
拓真は地雷を踏んでしまった。
「お兄ちゃんは慶明大学の経済学部」
「慶明!?」
「タクくん知ってるの?やっぱり有名だもんね」
「ええ…まぁ」
「妹は慶明小学校の6年生。来年薫風を受験するから合格したら仲良くしてあげてね」
(まさか…そんな…悪夢だぁぁぁ)
拓真の表情が強張る。
まるで悪い夢を見ているようだ。
暫し思考が停止する。
「タ~ク!」
我に返ると慧が笑顔で抱きしめてきた。
「タクにギュウしてあげなきゃね」
「忘れてたかと思いましたよ」
「忘れるわけないだろ」
-ブーブー
「タク。携帯震えてるよ」
「ちょっとすみません。誰だよ。この番号知らないな」
怪訝な表情で通話ボタンを押す。
「もしもし?」
電話に出た拓真は、聞き覚えのある声に身を構えてしまった。
「あっ!!キミは…!?」
拓真は再び悪夢に落とされた。
最初のコメントを投稿しよう!