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30分後、真子に無理矢理連れ出された拓真は表参道にやって来た。
「タクちゃんココよ!ステキなお店ね」
「人前でタクちゃんって呼ぶな」
「ゴメンねぇ~。ママうっかりしてたわ」
「ママも禁止!」
「はいは~い」
「いらっしゃいませ」
店内はティーン向けのファッションがディスプレイされている。
先程、真子に見せられた雑誌そのままのイメージだと拓真でも分かる。
「真子ちゃーん。お久しぶり。元気だった?」
「先生。ご無沙汰してます」
真子が「先生」と呼んだのはアイドル時代のスタイリストだったキャサリン。
名前はカタカナだが、祖父から3代続く生粋の江戸っ子だ。
80年代は真子のようなアイドルのスタイリストをしていたが、3年前にデザイナーに転身した。
彼女のデザインはティーンに支持され、専属モデルの狗谷遼はカリスマ的な人気を誇っている。
「息子の拓真です」
「こんにちは」
挨拶はしたものの、拓真にはこの展開がイマイチ理解出来ない。
まさかとは思うが…!?
「あら。真子ちゃんに似て可愛い坊やね」
(坊や?)
「この子ったらオシャレに無頓着で。先生、宜しくお願いします」
「任せて。拓真くん、こっちへいらして」
「はぃ?」
不本意ながらもキャサリンの後に続いてしまう。
併設のヘアースタジオに連れられ、なされるがままに髪をイジられた。
緩めのウェーブが全体を軽やかな印象に見せている。
「あらっステキだわ!」
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