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「愛されキャラだよ。拓真くんの笑顔って優しいもん」
「優しい…?」
優しい笑顔。
思い浮かぶのは慧の笑顔。
愛されている?
慧に愛されている?
「拓真くんって好きな人いるの?」
「い、いないですよ!!」
「赤くなってるよ」
「えっ!?」
慌てて両手で頬を隠す。
隠しても頬の火照りが掌に伝わる。
「バレバレだね。どんな女の子?」
「好きな女の子なんかいません」
また頬を膨らませる。
「じゃあ男の子なのかな?」
「な、な、ナニ言ってるんですか!!お、お、男をす、好きだなんて、ありえませんよ」
図星をつかれてうろたえる。
激しく動揺しているのが自分でも分かる。
「へぇ~。男の子が好きなんだ」
「だから違いますってば。ウチは男子校だから女の子はいませんよ。男ばっかりです」
「そうなの?じゃあ恋じゃなくて友情なんだね」
友情…。
慧に対する感情は当てはまらないような気がする。
やはり慧への感情は“恋”が正解であろう。
だが、遼の理解は得られそうもない。
「拓真くん、友達多くないでしょ。でも、大切な親友がいるよね?」
「どうしてですか?」
「なんとなく分かるの。深くて強い絆って言うのかな。それで結ばれた友達がいて、その友達にものすごく愛されているんだなって。拓真くんも愛しているでしょ?」
「ええ」
深く強い絆。
思い浮かぶ4人の笑顔。
まだ出会ったばかりだが、もう数年来の付き合いのようにも感じる。
『友達なんかいらない』
そう言って突っぱねていた自分が、いつの間にか仲間の温もりを恋しく思うようになっている。
「いいなぁ。大切な友達がいて。男の子の友情は女の子とは違うもん。一生付き合える友達っていいよね。そう思わない?」
「そうですね」
一生涯の友達。
拓真はこの時はっきりと感じた。
この先、何年何十年と5人で手を取り助け合い、生涯変わらぬ友情を築き上げると。
4人の存在が自分を支え、そして拓真自身も4人の支えとなることを。
「これ着てみて」
遼がセレクトした衣装を試着する。
鏡の中の自分はどこか知らない人のように思える。
だが、鏡の中の自分は優しい表情をしている。
優しい表情の拓真を見つめるもう一人の拓真。
「なんだよ。楽しそうじゃん」
そう言ってもう一度拓真自身を見つめる。
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