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「それじゃ。サイズ調整しておくから木曜日以降にいらしてね」
「先生ありがとうございました。遼ちゃんもありがとう」
「いえ。お洋服好きですから。拓真くん、楽しかったね」
「はい」
3着の洋服を購入した。
店の雰囲気にようやく慣れてきた拓真だが、正直なところ苦手意識は拭えなかった。
「遼ちゃん、時間あるかしら?お茶しましょう。お礼よ」
「これから取材なんです。それに甘いモノはちょっと」
「お仕事じゃ仕方ないわね。タクちゃん、先生と遼ちゃんにご挨拶は?」
「ありがとうございました」
緊張した表情のまま丁寧に頭を下げる。
「拓真くん。あなたはイイオトコになるわよ。私には分かるの」
「先生。拓真はノーマルなんですよ」
「クンクン。あら。同じニオイがするわよ」
キャサリンが鼻を突き出す。
「も~。ヤメテよ。うふふ」
「はいはい。拓真くん、またねぇ」
「ど、どうも」
終始調子が狂いっぱなしだった。
女性が苦手なのか、店の雰囲気に圧倒されたのか。
たぶん、どちらも当てはまるだろう。
店を出ると、あたりはライトアップされたショーウインドウの灯りが輝きを放っている。
「キレイね」
ライトの中で微笑む真子はいつもより華やかに見える。
アイドル時代の真子は知らないが、きっと今のように眩しく輝いていたのかもしれない。
「お母さん。ありがとう」
「どうしたの?」
「なんか、言いたくなったんだよ」
顔を赤くして微笑んだ。
溢れる感謝の思いを真子に伝えたいのだ。
「キャサリン先生って美人だね」
照れくさいのか慌てて話題を変える。
「タクちゃんったら。気付かなかったの?」
「何が?」
「キャサリン先生はオトコよ」
「えーーーっ!?」
初めての表参道。
戸惑いの連続であったが新たな発見もあった。
真子による“拓真改造計画”の第一幕がスタートした。
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