拓真改造計画

10/10
前へ
/201ページ
次へ
「それじゃ。サイズ調整しておくから木曜日以降にいらしてね」 「先生ありがとうございました。遼ちゃんもありがとう」 「いえ。お洋服好きですから。拓真くん、楽しかったね」 「はい」 3着の洋服を購入した。 店の雰囲気にようやく慣れてきた拓真だが、正直なところ苦手意識は拭えなかった。 「遼ちゃん、時間あるかしら?お茶しましょう。お礼よ」 「これから取材なんです。それに甘いモノはちょっと」 「お仕事じゃ仕方ないわね。タクちゃん、先生と遼ちゃんにご挨拶は?」 「ありがとうございました」 緊張した表情のまま丁寧に頭を下げる。 「拓真くん。あなたはイイオトコになるわよ。私には分かるの」 「先生。拓真はノーマルなんですよ」 「クンクン。あら。同じニオイがするわよ」 キャサリンが鼻を突き出す。 「も~。ヤメテよ。うふふ」 「はいはい。拓真くん、またねぇ」 「ど、どうも」 終始調子が狂いっぱなしだった。 女性が苦手なのか、店の雰囲気に圧倒されたのか。 たぶん、どちらも当てはまるだろう。 店を出ると、あたりはライトアップされたショーウインドウの灯りが輝きを放っている。 「キレイね」 ライトの中で微笑む真子はいつもより華やかに見える。 アイドル時代の真子は知らないが、きっと今のように眩しく輝いていたのかもしれない。 「お母さん。ありがとう」 「どうしたの?」 「なんか、言いたくなったんだよ」 顔を赤くして微笑んだ。 溢れる感謝の思いを真子に伝えたいのだ。 「キャサリン先生って美人だね」 照れくさいのか慌てて話題を変える。 「タクちゃんったら。気付かなかったの?」 「何が?」 「キャサリン先生はオトコよ」 「えーーーっ!?」 初めての表参道。 戸惑いの連続であったが新たな発見もあった。 真子による“拓真改造計画”の第一幕がスタートした。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加