渋谷に行こうね

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1限目の間も漣はリストウエイトを外さなかった。 そして休み時間になるとすぐにパテを取り出した。 「今度はピンク!」 慧には漣がいじらしく見える。 「漣くん頑張ってるね」 「うん。ご褒美もらえるでしょ」 「可愛いことを言ってくれるなぁ。ご褒美に貰うもの考えた?」 「サトくんには頭を撫でてもらうんだ」 「ご褒美でなくても、いつだって撫でてあげるのに」 柔らかい笑みを見せながら漣を見つめる慧。 「あいしゅくんにはギュウしてもらうんだよ」 「いつもやってるじゃん」 「1等賞のギュウは特別なんだよ!」 「カワイイ!」 元気は今すぐにでも抱きしめたい衝動を理性で押さえ込む。 「漣くん。俺は?」 「秀人くんは、ダジャレを3つ教えてね」 「おーけー!」 拓真は得意気な秀人に意地悪な目を向ける。 「漣くん。ヘタレさんのダジャレなんかドン引きされますよ」 「だから、それは使わないようにするんだよ」 「なるほどね」 拓真と漣にドS番長の片鱗が現れ出した。 「タクくんは、左手の使い方を教えてよ。お箸を持ってご飯が食べられるようになりたいし、字を書いたり、何でもできるようになりたい。俺も左利きだったらよかったのにね」 漣は分かっているのだ。 遠くない将来に、右手も動かなくなることを。 両足はすでに自由にならない。 その上に利き手である右手までも動かなくなれば頼れるのは左手だけだ。 生まれつき握力が弱い右手と違い、幸いにも左手は一度も異常は見つかっていない。 漣は左手の訓練を急ぐのであった。 その日は…すぐそこまで近づいている。
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