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2時限目が終わってもまだ、漣はウエイトを外さない。
元気は数学と格闘中。
「あいしゅくん。どうしたの?」
「宿題の問題が分からなくて…うひゃ」
「休み時間に宿題ってどーなのよ?」
直前まで宿題に手をつけない元気に呆れる秀人。
「あいしゅくん。どこが分からないの?」
「ここだよ」
「あ~!ここね。ここは、このXをこっちにもってきてYをこうすると簡単だよ」
各教科全て得意な漣だが、数学は得意中の得意だ。
「あ~!なるほどね。そっかー!よく分かった。漣くんの教え方は先生より分かりやすいよ。漣くん数学の先生になれば?」
「学校も先生も大っ嫌いだよ。俺ね。絵が好きだから、絵の仕事がやりたいんだ」
「有名な画家ってのもアリだね。でも先生もいいと思うよ」
漣はこの時の元気の言葉を生涯忘れなかった。
何気なく発した元気の一言。
これが5人の将来に大きく関わることになることなど、この時は誰も知らなかった。
「漣くんの絵ってスゴいんだよ」
「シューちゃん知ってるの?」
「クリスマスに俺の似顔絵を描いてくれたんだ」
秀人はクリスマスに貰った絵の写真を持ち歩いている。
見せてもいいのだが、漣との思い出に誰かが入ってくるようで、やはり見せないことにした。
「似顔絵か。いいなぁ」
元気がポツリと呟く。
「あいしゅくんも描いてあげるよ。右手はムリだから、左手で描けるようになるまで待ってね」
「うん!」
元気は嬉しそうに笑った。
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