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「どうする?学食行く?渋谷で食べる?」
「有栖川さん。今日はお金持ってるんですか?」
「あるよ~ん」
「ヘタレさんは?」
「お金はあるけど、漣くんを送っていくから駅で待ってて。漣くん、送っていくから支度して」
ニコッと笑った秀人。
一方、漣は何かを言いたげに元気を見るが、すぐに秀人の方に向き直った。
「俺、学食行く」
「漣くん、帰るんじゃないの?やることあるって言ってたじゃん」
「あるよ。走る練習するんだよ。あのさ秀人くん。一人で大丈夫だから毎日送り迎えしてくれなくていいよ」
不機嫌そうな口調は、秀人から外した視線を窓の外へと泳がせた。
「ちょっと漣くん。何か気に入らないことでもあるの?」
秀人はいつもの気紛れにすぎないと思った。
困惑した顔で漣の肩に手を乗せる。
「みんなで渋谷でご飯食べればいいじゃん!」
漣はそう言うとぷくっとふくれて秀人の手を振り払い車椅子を動かした。
「あー!待って!待って!!」
拓真が漣の前に回って車椅子を止めた。
そして屈んで漣より姿勢を低くする。
「漣くんごめんなさい。渋谷で食べないから。学食行きましょうね。ごめんね。走る練習しましょうね」
拓真は漣の顔を覗き込む。
漣は拓真の顔を見つめたが何も言わずに俯いてしまった。
「漣くん?」
「渋谷…行ったことない。一人で電車に…乗ったことないんだ…」
漣は涙を溜めて声を振り絞った。
「あー!!漣くんごめんね。みんなと一緒に渋谷に行きたかったんですね。ごめんね」
拓真は漣をギュッと抱きしめた。
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