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「ねえ。これ持って帰って」
漣はカバンと拓真に貰ったパテを渡した。
「まあ~!粘土じゃない。かわいいわね」
「粘土じゃないよ。タクくんに貰ったんだ」
「あっ、気にしないで下さい。貰い物ですから」
「でも、これはタクくんが買ってくれたんだよ」
手首に巻いたリストウエイトを見せる。
「あら。いただいちゃっていいの?漣。きちんとお礼言った?」
「言ったよ。お返しも考えてるよ」
「偉いわね」
お姉ぃさんは漣のほっぺをツンツンと突っついた。
「やめてよ!みんなが見てるだろ。もう中学生なんだからね。いつまでも子供扱いしないでよ」
「はいはい」
お姉ぃさんはキレイな笑顔で微笑んだ。
「それじゃあ。漣をお願いします。ワガママを言うようだったら、その辺に置いて来ちゃってかまわないわよ。そうだわ!今度、遊びにいらしてね。美味しいものを用意しておくわ」
「はい!」
元気が返事をした。
慧はまだポカーンとしている。
「すみませ~ん」
お姉ぃさんは駅員に声を掛けた。
「漣くん、切符買うよ」
秀人が財布を手にしている。
「ボタン押してもいいの!?ヤッタァ~!!」
漣は嬉しそうに車椅子を動かして券売機へ向かい、元気に教えてもらいながら切符を買った。
「自分で切符を買ったのって初めて。いつも桃がボタンを押すからやってみたかったんだよね。スゴいよ。みんなのおかげで、初めてのことがたくさんできるよ。ありがと」
「渋谷までお願いします」
お姉ぃさんが駅員に深く頭を下げた。
「漣くん、ココに切符を入れるんだよ」
「これもやってみたかったんだぁ」
漣はクラッチを使っていた。
両手が塞がっている漣に代わり、改札機を通る時はいつも妹の桃が切符を入れていた。
漣は自分でやってみたいと思っていたが、先回りして手助けしてくれる桃には何も言えなかった。
改札機に切符を通す漣の背中を見守るお姉ぃさんの目から笑みが零れる。
「漣。楽しんでらっしゃいね」
「うん。行ってきま~す」
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