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「漣くん。今のお姉さん誰?すごくキレイな人だね?」
慧は頬を赤らめる。
「お母さんだよ」
「えーーーっ!?」
慧も拓真も元気も駅員も驚いた。
「漣くんのお母さんっていくつなんですか?」
「43歳だよ。お母さんには俺が言ったって言わないでよ」
「俺の母ちゃんより11歳も上だよ。見えないなぁ」
元気は現実に引き戻された。
「お母さんは翻訳の仕事をしてるんだ。ヒマそうなんだけどね。青山あたりに事務所を借りたいんだって。仕事じゃなくて遊ぶためだよ」
漣の母の澪は12歳までアメリカで育ち、結婚前は国際線の客室乗務員として世界中の空を飛びまわっていた。
結婚後は得意の語学をいかし、フリーで翻訳の仕事をしている。
澪にとっての懸念は漣の中学進学だった。
小学校同様に受け入れ拒否があるだろう。
その場合は澪が付き添う覚悟でいた。
仕事量をセーブしていたのはそのためである。
電車が入ってきた。
駅員は電車とホームの間に簡易スロープを置き、車椅子を電車に乗せると車椅子専用席へ誘導した。
「ありがとうございました」
漣は駅員に丁寧にお礼を言った。
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