渋谷に行こうね

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「漣くん、もう大丈夫だよ」 元気は漣を連れて全力で走った。 「怖かったぁ」 「ビックリしたね。つか、ココはドコ?」 「えー!?迷子になっちゃったの?あいしゅちゃんだけだと不安だなぁ」 涙が零れ落ちた。 恐怖が増加された瞳を元気に投げかける。元気の瞳にも不安の色が見える。 「アリスちゃーん!」 1ブロック先で慧が手を振っている。 事件直後、慧は少女軍団の後を追いかけた。 後ろから様子を見守り、拓真なら秀人を連れて逃げ切ると確信すると、元気たちが逃げた方向へと引き返した。 「タクたちは?」 「分からない。あいつらと一緒だからね。連絡待とう」 「サトくん…」 漣は震えながら慧の手を握る。 「漣くん。もう大丈夫だよ」 慧は優しく微笑むと、漣の頭を撫で背中を優しく叩いてやった。 「怖かったよ。心臓が止まるかと思った。」 「おいらもビビッタ」 クシャっと笑い震える漣の手をしっかりと握り返した。 元気は事の経過を振り返ってみたが何が起きたのかさっぱり分からない。 あの軍団は何者なのか? 「オリーブちゃん。さっきの何?」 「知らねぇよ。おっかなかったね。バケモンかと思ったわ」 一方。 「だから目を合わすなって言ったでしょ。子供じゃないのにはしゃぎすぎです」 「すみません…」 秀人は拓真にこっぴどく叱られている。 拓真の機転と慧の判断がなければ、センター街の真ん中で騒動を起こしていたところだった。 「電話して下さいよ」 「え?」 「漣くんにですよ。よく考えたらみんなの番号知らなかったんですよ。漣くんの番号知ってるんでしょ?」 「あっ!漣くん、携帯変えて番号も変えたって言ってた」 「だからあなたはヘタレなんですよ!どうするんですか!!」 容赦のない怒号が降り続く。 秀人は渋谷の真ん中で小さく小さく小さくなった。 慧は時計を見る。 拓真たちと離れて15分が過ぎた。 上手く逃げたと思うが連絡が無い。 慧の脳裏に嫌な考えがよぎる。 「タクたち連絡遅いね」 「オリーブちゃん。俺、みんなの番号知らないんだけど。みんなも俺の番号知らないよ」 「おいらもだ」 今更ながら一番単純な問題に気づいた。 「漣くん。シューちゃんは漣くんの番号知ってるんだよね?」 「番号?あ…!?」 この年、"ガングロ"や"ヤマンバ"が注目されるのだが、5人は一足早く流行に遭遇してしまったようだ。  
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