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「あ~あ。けっきょくハンバーガーじゃないですか。これなら学食のほうが良かったよぉ」
ラーメンが食べたい慧と、肉が食べたい元気に意見が別れ、拓真は慧に、漣は元気に加勢し、秀人の一票によってメニューが決まるというその時。
「よろしくおねがいしま~す」
手渡されたのはハンバーガーショップのクーポンだった。
「もっとガッツリ食べたかったなぁ」
「有栖川さん、2つ食べるんでしょ」
「こっちは肉だけど、こっちは魚なの!」
ハンバーガーとフィッシュバーガー。
相変わらず元気の主張には説得力がない。
「あいしゅちゃん。これ、どうやって食べるの?」
「ん?漣くんもしかしてハンバーガーも初めて?」
「そうだよ!」
あっけらかんと答える。
澪はファーストフード店には連れて行ってくれない。
人生初のハンバーガーショップでテンションがあがる。
「漣くん。ハンバーガーはバクッとかぶりつくんだよ。やってみな」
慧はそう言うと、ハンバーガーをかぶってみせた。
「ほお~。サトくん、かっけぇ~!」
漣は左手でハンバーガーを掴もうとしたが掴み損ねた。
「漣くんどうした?」
「力が入らなかった…」
漣は左手の指を見る。
いつもと変わりはない。
「漣くん。朝からずっと手首にウエイトを巻いていたから痺れたんじゃない?」
慧に言われると、そんな気もしてきた。
元気がウエイトを外してやると手首が紫色に鬱血している。
「色変わってるじゃん!!」
「なにやってんだよ!!」
「だって1等賞ほしいからさ…」
「それにしてもやりすぎなんだよ」
「ごめん」
みんなに心配をかけてしまいショボンと俯く。
「漣くん。暫くの間、指先を下に向けてみて。血の流れが止まったからそうなったんだよ。すぐに治るから心配しなくていいよ」
慧の言った通りにやってみる。
「でも、これじゃあ食べられないよぉ」
甘えた瞳で元気をじーっと見つめる。
「ふっ。はいはい。何から食べる?」
元気も手慣れたものだ。
「ハンバ~ガ~!言っとくけど、甘えてるんじゃないよ。不可抗力だからね!」
「分かってるよ」
甘えられる度に、胸をキュンとさせる元気なのだ。
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