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「今日は初めての事がたくさんできた。タクくんは一緒に行くって言ってくれたけど、やっぱり連れてきてもらったんだから、ちゃんとお礼を言わせてね。みんなありがとう」
イジメを受けていた小学校時代には、友達なんていなかった。
誰かと電車に乗って出掛けることもなかった。
この4人に出会えたから出来たこと。
漣にとって初めてづくしの経験を与えてくれた4人への感謝を、きっちりと伝えたい。
「自分で切符を買って、渋谷に来て、ハンバーガーを食べたんだね」
秀人は指を折って漣の“初めて”を数えた。
「ヘタレさん。ナンパを忘れてますよ」
「あー!!そうだったぁ」
苦い体験を思い出し秀人は撃沈する。
「タクくん。ナンパって、Hey!彼女お茶しない?ってやつ?」
「ふふっ。まあ。そんなとこですね」
拓真は漣の言い方が可笑しくて笑ってしまった。
「え~~っ!?秀人くん、いつナンパなんかしたの?」
「してないよ。漣くんがされたんでしょ!黒いのに」
「ん?タクくん。あれってナンパなの?めちゃ怖かったよ」
漣は秀人の方を向いたり、拓真の方に身を乗り出したりと落ち着きがない。
「漣くん!おとなしくしないと食べさせてあげないよ!」
こう言ってもおとなしくなるはずがないことを元気は学習済みだ。
「漣くんがカワイイからナンパされたんだよ」
慧は思ったままを口にした。
「サトくん。俺ってカッコイイじゃなくてカワイイなの?」
「華奢だし、小柄だし、顔が小さいし。カワイイのほうがピッタリだよ」
漣は暫く考えて再び口を開いた。
「俺、秀人くんよりも大きいよ」
たしかに車椅子に乗っていると、誰よりも視線が下なのでいつも4人を見上げている。
甘えん坊の性格もあるが、慧も拓真も元気も、時々、漣に対して小さい子供に接しているように錯覚することがある。
「そうだね。漣くんごめんね。小柄じゃなかったね」
慧は漣への接し方を改めようと思った。
「あいしゅちゃんがお姫様抱っこしてくれるんだったら、カワイイでもいいけどね」
そんなところがカワイイ。
みんなそう思った。
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