渋谷に行こうね

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渋谷は坂が多い。 階段や、ちょっとした段差が至る所にある。 「よいしょ~!」 その都度、漣の車椅子をみんなで持ち上げる。 「ありがとう。ごめんね」 漣はさっきからそれしか言わない。 車椅子に乗るようになり、移動は各段とラクになった。 しかし、握力の弱い漣には、僅かな段差であっても自分ではどうする事も出来ない。 (一人で渋谷に来るのは無理だ…。) 漣が初めて突き当たった現実だった。 「ここですよ」 拓真御用達のシューズショップに着いた。 「うわっ!すげえ~!!」 秀人のテンションが上がる。 「あっ、あれカッコイイ!!」 元気も上昇中。 漣は居心地の悪さを感じている。 漣にとって靴はオシャレの対象ではなかった。 歩行の安定を重視し、デザイン性の欠片もない特注品の靴ばかり履いてきた。 しかも、車椅子になった今は必要のない物でしかないと思っている。 出来ることなら店を出たい。 慧はそんな漣に気づいた。 「漣くんはどんな靴が好きなの?」 「サトくん…」 「オシャレは足元からって言うだろ」 「こんな足でもオシャレできる?」 「ステキな足だよ」 慧はふにゃっと笑った。 「ねえ。みんなで買わない?色違いでさ」 秀人は拓真と色違いのラインが赤い靴を持ってきた。 「いいかも!」 元気は緑を選んだ。 「やめて下さいよ。お揃いなんてイヤですよ」 拓真は抵抗したが、ヘタレとバカを止めることはできない。 「おいらも!」 「俺も!」 慧と漣まで乗ってきた。
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