1000人が本棚に入れています
本棚に追加
渋谷は坂が多い。
階段や、ちょっとした段差が至る所にある。
「よいしょ~!」
その都度、漣の車椅子をみんなで持ち上げる。
「ありがとう。ごめんね」
漣はさっきからそれしか言わない。
車椅子に乗るようになり、移動は各段とラクになった。
しかし、握力の弱い漣には、僅かな段差であっても自分ではどうする事も出来ない。
(一人で渋谷に来るのは無理だ…。)
漣が初めて突き当たった現実だった。
「ここですよ」
拓真御用達のシューズショップに着いた。
「うわっ!すげえ~!!」
秀人のテンションが上がる。
「あっ、あれカッコイイ!!」
元気も上昇中。
漣は居心地の悪さを感じている。
漣にとって靴はオシャレの対象ではなかった。
歩行の安定を重視し、デザイン性の欠片もない特注品の靴ばかり履いてきた。
しかも、車椅子になった今は必要のない物でしかないと思っている。
出来ることなら店を出たい。
慧はそんな漣に気づいた。
「漣くんはどんな靴が好きなの?」
「サトくん…」
「オシャレは足元からって言うだろ」
「こんな足でもオシャレできる?」
「ステキな足だよ」
慧はふにゃっと笑った。
「ねえ。みんなで買わない?色違いでさ」
秀人は拓真と色違いのラインが赤い靴を持ってきた。
「いいかも!」
元気は緑を選んだ。
「やめて下さいよ。お揃いなんてイヤですよ」
拓真は抵抗したが、ヘタレとバカを止めることはできない。
「おいらも!」
「俺も!」
慧と漣まで乗ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!