渋谷に行こうね

24/26
前へ
/201ページ
次へ
「お兄ちゃん。買いたいものがあるから行ってきていい?」 「秀人くんたちを待たせると悪いだろ。後じゃダメか?」 「漣兄ちゃんが一緒だと大変だから先に行ってくる。買ったら電話するから」 樹には桃が漣を避けているように感じられる。 桃の態度が顕著になってきたのは4月になってからだ。 先月までは仲の良い兄妹だった。 桃は小さい時に漣を虐めるグループ達から嫌がらせをされたことがある。 そのこともあり、漣とは別の学校に進学した。 桃は幼いながらも漣の障害を理解し、手助けを惜しまない子だ。 物心がついた時から漣の足は不自由だった。 漣にとって不自由な足が当たり前であったように、桃にもそれが日常であった。 嫌がらせはされたが、だからと言って漣の責任だとは思ったことなど一度も無い。 その桃が漣への態度に拒否感を見せ始めた。 漣が中学に入学して、新たな生活を歩み始めた矢先のことだ。 車椅子に乗る漣が受け入れられないのか。 樹は何度も思考を巡らせた。 だが、答えになりうるものは見つけられない。 そして今日も…。 桃へ直接問い質すことは躊躇われる。 流れに任せ、時が解決するのを待つしかないのか。 兄として妹の悩みすら取り除いてやれない自分に虚無感を覚える。  
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加