渋谷に行こうね

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「あっ!お兄ちゃんだぁ」 前からやってくるのは、漣とはタイプが違うが超イケメン。 「こんにちは。いつも漣が面倒掛けているみたいですみません。秀人くん、久しぶりだね。元気だった?」 「はい。紹介しますね。織作君と有栖川君です」 秀人は母の時のように兄にも2人を紹介した。 「はじめまして。俺も今年、薫風を卒業したんだよ」 樹は優しそうな笑顔を見せた。 (キレイだ) 母も兄も整いすぎるほどの美貌だ。 慧は母に続き兄の美しさにも心を奪われた。 「お兄ちゃん、桃は?」 「買物があるんだって」 「桃も恥ずかしくて逃げてるんだよ。しょうがないなぁ」 漣はわざと明るく言った。 漣の真意に気づいた者はいない。 「じゃあ。俺たちはココで失礼します」 「ありがと。これからも漣を頼むね」 樹は母と同じように深く頭を下げた。 弟が心を開いた親友に、兄として真摯に接することが、樹にとっても喜ばしく思える。 「あいしゅちゃん」 漣が両手を前に出している。 「漣くん、いくらなんでもココではマズイでしょ」 「ヤダぁ~!」 元気だって別れのギュウをしてやりたいのだが、場所が場所だけになんともできない。 漣はキコキコと車椅子を動かし元気の前に来た。 「じゃあ。俺がしてあげる!」 はちきれんばかりの笑顔で元気の腰に飛びつきギュッと抱きしめた。 「あっ。お兄さん。気にしないで下さい。ちょっとした儀式みたいなものですから」 秀人が作り笑顔でとりなす。 漣の辞書に"TPO"は存在しない。  
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