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「あっ!!ねぇねぇスゴいよ!!」
「有栖川さん。うるさいですよ」
「ちょっと、あれ見てよ。あれ。あれ!」
元気が指差す先には大きな肉の塊がある。
「うわっ!ローストビーフじゃん。でかっ!」
新郎の秀人でさえも目を見開く大きさだ。
「えっ!!肉?肉だよね!!」
元気は言うが早いかローストビーフを目指して走り出した。
「ちょっと待って下さいよ」
「じゃあ、おいらも」
拓真と慧が元気に続く。
残った秀人と漣は顔を見合わせて笑う。
「いい式だね。シューくんおめでとう」
漣はキレイな瞳を秀人に向けた。
「ありがっとぉぉぉ!!!俺がぶっちぎりの1着だぜぇ!ちょ~っと早かったか?」
「ちょっとね」
漣は微笑んだ。
長い睫毛が黒目を際だたせる。
「じゃあ、漣くんが2着狙っちゃいなよ!」
次の瞬間、漣の表情から笑みが消えた。
伏し目がちに秀人から視線を離して、ぼんやりと自分の手を見る。
「俺は…。結婚は無理…だよ」
「まったぁ~。何をおっさる猿岩石!」
秀人は寒いギャグをかまし漣の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ふっ。オヤジだなぁ」
「おや?漣くん。今、不覚にも笑ってしまいましたね?」
「笑ってないよ」
「笑った。笑った。オヤジバンザ~イ!」
「シューくんにはかなわないなぁ」
秀人と漣は小学校6年の秋に出会い高校を卒業するまで一緒に過ごした。
出会ったその日から、漣にとって秀人は希望であり眩しい存在だった。
辛い時も苦しい時も、いつも秀人は隣にいてくれた。
どれだけ感謝しても足りないと思うほど、秀人に支えられ励まされた。
そんな友の結婚を漣は心から祝福する。
「で、漣くんも肉食べる?」
「うん!」
「おーけいおーけい。お任せあれぇー!」
秀人は漣の肩をポンポンと叩くと、料理が並ぶテーブルへと駆け出した。
「やあ!」
秀人はローストビーフを切り分けてもらっている元気の前に割り込んだ。
「何が『やあ!』なんですか?キチンと並んで下さいね」
拓真が列の後方を指差す。
さすがにメインだけあって10人程が列を作っている。
「タクぅ~。かたいこと言いなさんな」
「甘えてもダメですよ」
シェフは軽く笑みをこぼしながら、大きな塊から2枚切り分けて新郎の秀人に皿を渡した。
「あっ!シューちゃんズルイよ!!」
元気は怒ったフリをしながらも笑顔だ。
「俺、今日主役だも~ん。お先にぃ~」
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