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拓真は地上へと急ぐ。
昨日も漣を連れ、みんなで渋谷に来たばかりだ。
ただでさえ通学で毎日通る。
せめて原宿にすれば良かったとも思うが、それではご褒美を楽しみにしている漣に申し訳ない。
しかも、今日は雨だ。
先週の火曜日の放課後の事だった。
携帯電話が鳴り、出てみると小学校の後輩だった。
「相談がある」と呼び出された。
だいたいの内容は察しがつく。
それは拓真にとっても好都合だった。
いつまでも隠してはおけない。
あの人との思い出を大切にしたい。
その為の小さな綻びも見過ごすことは出来ない。
それは、かたくなな拓真の心にともった小さな灯りだった。
小さな小さな光だが、今の拓真には十分過ぎるほどに眩しく思える。
長い時間を掛けてやっと手に入れた光。
何物にも代え難く、誰よりも大切なあの人。
理解されなくてもいい。
あの人に拒まれてもかまわない。
拓真を深い闇から救い出してくれた小さな光。
今はその光にすがりつくだけだが、きっといつか、自分があの人の光になってみせる。
漠然とした感情が一つの形に変わりゆこうとしている。
そう。
あの人の光に!!
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