秘密

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「桃、今日はどこに行ってきたの?」 朝からオシャレをして出掛けた娘はご機 嫌な顔で帰ってきた。 子供だと思っていたが、いつの間にかデートをするようになった娘が微笑ましく感じる。 「先輩とプラネタリウムに行ってきた の。これを買ってもらっちゃった」 桃は携帯を取り出し、拓真に買っても らったストラップを見せた。 「あら。かわいいわね。なんのキャラク ター?」 「双子座」 「桃は双子座じゃないだろ。なんでそん なに双子座が好きなんだよ。あっ、分 かったぞ。彼氏が双子座なんだろ!」 漣にしては珍しく図星をついてきた。 だが、 その彼氏が拓真だとは思いもしない。 「ちがうもん。そんなんじゃないもん」 桃は頬を赤らめた。 漣の指摘を認めたようなものだ。 「赤くなったぞ。どんなヤツなんだ?同 級生か?」 「お母さん、漣兄ちゃんになんとか言っ てよ」 困り顔で澪に助けを求める。 「そうねぇ。漣は彼女いないの?」 「いるわけないじゃん…。でも、とびっ きりカワイイ彼女を見つけるから楽しみ にしといてよ!」 桃は拓真との秘密を上手くかわしたが、 いつバレるかと考えると冷や汗が出てく る。 恋愛に関しては鈍感な漣だが、小さな綻びも見逃すことは出来ない。 幼い桃には約束を守ることしかなかった。 拓真に対する意地らしいまでの強い私情は、この後、桃から漣へ、そして拓真の心にも深い傷を与えることになる。
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