秘密

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「よいしょっ」 漣はベッドに腰掛け両足の装具を外す。 「ふぅ~」 家の中で使う装具はプラスチック製の軽いものだが、ずっと付けていると圧迫感を感じる。 外すと足だけでなく気分も軽くなる。 装具がなければ足元がグラついてきちんと立つことが出来ない。 杖を支えにしても数メートル歩くのがやっとだ。 自分の部屋に長時間いる時は外す時もあるが、部屋から一歩外に出るには必要なのだ。 右膝が痛む。 雨の日は関節の痛みが強い。 漣は慣れた手つきで両手で膝を抱えて大きく回す。 膝の次は足首。 物心がついた頃から毎日続けているが、膝も足首も硬くなる一方だ。 それでも、筋肉が固まらないように毎日欠かさずにやらなければいけない。 「手もやっとくか」 漣はベッドから滑り下りると四つん這いになって机に向かい、拓真から貰ったパテを取り出した。 「ただいま」 樹が帰ってきた。 「あっ、お兄ちゃんだ」 漣は四つん這いのまま廊下に出た。 「お兄ちゃんお帰りなさい」 「ただいま。漣、アイスクリームを買ってきたよ」 「ヤッタァ!!」 -バタバタバタバタ 「お兄ちゃんお帰りなさ~い」 2階にいた桃は階段を駆け下りると樹に飛びついた。 「桃、アイスあるよ」 「ヤッタァ!!」 桃は大きな瞳をクリっとさせ、可愛い笑顔を紅潮させた。 「桃、チョコがいい」 「俺もチョコ」 「チョコは1つしか買ってないよ」 「じゃあ早い者勝ちね。って言うか、漣兄ちゃん何してるの?」 漣は樹を迎えに出たまま廊下に座り込んでいる。 「お兄ちゃんを迎えにきたんだよ」 「だから、どうしてそんなとこでペタッとしてるの?」 「俺様スタイルだ!」 「わけわかんなーい。お兄ちゃん行こ」 桃は樹からアイスボックスを受け取ると、さっさとリビングに行ってしまった。 「待てよ!チョコは俺んだぞ!」 漣はペタペタと四つん這いのままリビングに向かった。
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