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「お待たせぇ~」
秀人はニコニコと子供っぽい笑顔を見せながら、漣が待つテーブルへ戻ってきた。
「割り込みなんかしちゃって、アリスちゃんたち怒ってるでしょ?」
漣は3人の方に視線を向ける。
「いーの。俺、今日主役だぜ!」
また子供っぽい笑顔を見せる。
出会った日から変わらない秀人の笑顔だ。
漣はこの笑顔に何度も助けられた。
秀人の笑顔がいつまでも輝くようにと祈り続ける。
「主役がお客様を差し置いちゃいけないんじゃないのぉ?」
「あれは、客じゃないよ」
切り分けてもらっている間もうるさい3人を見つめる秀人。
だが、口ではこう言いながらも、3人が学生時代のまま変わらずいてくれることが嬉しいのだ。
「幾つに切る?」
「4等分。キレイにね」
「4等分ね。了解!!」
秀人はナイフとフォークを使いローストビーフを切り分けるが、大きさがバラバラで切り方も雑である。
「あいかわらず不器用だな」
秀人が切り分けるローストビーフを眺め、漣は口元を緩める。
「うっさい!」
秀人は赤くなった。
手先の不器用さにかけては秀人の右に出るものはいない。
ナイフとフォークを持つまでは良いが、切り分けるとなるとこの始末である。
「シューくんの不器用さは、俺たちの友情も破壊するもんな」
口の端を上げ、移した視線が自己嫌悪の秀人に追い討ちをかける。
「もおー。あの話はすんなよぉ!!」
自分の切り分けたローストビーフを見た秀人もクスリと笑ってしまう。
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