1000人が本棚に入れています
本棚に追加
「練習が終わったら渡そうと思ってたんだけど、みんな忙しそうだから今渡すね」
漣は手紙を取り出した。
「土曜日のお礼。俺、何もお返し出来ないから、みんなに手紙を書いたんだ」
漣は土曜の夜と昨日の一日をかけて4人に手紙を書いた。
不自由な指で丁寧に心を込めて感謝の気持ちを綴った。
4人と出会ったことで今まで知らなかった世界を知り、諦めていたことにも挑戦できるようになった。
どんなに感謝しても足りない。
その思いを伝えたかった。
「漣くん。ありがとー」
秀人が漣に抱きつこうとしたが、
「漣くん。ありがとーーーーー!!!」
元気に先を越され、秀人は元気に抱きつく格好になってしまった。
席替えの明暗がクッキリと分かれた。
「漣くん。おいらたちも美術部に行ってみる?」
「走る練習をしたいからもうちょっとしてからにする」
入部の期限は今月末で体力測定と同じ日だ。
その日までに入部届を提出しなければ、学校側により適当に振り分けられてしまう。
漣はギリギリまで練習をして、1位を獲得後に入部届けを提出しようと考えている。
「分かった。今日はちょっと覗いてくるだけにするね。漣くんも入部希望ですって伝えておくよ。自主練頑張ってね」
「ん?自主練?あっ!そうだ!忘れてた!!タクくん、自主練のやり方教えて!!」
-ピコピコ
久しぶりに携帯ゲームを持ち出し熱中する拓真の腕を掴む。
「は?いやいや漣くん、おかしいでしょ。自主練ですよ!」
「やったことない」
「ほお。じゃあ自主練すれば“初めて”が経験出来ますね」
「頑張りますっ!!」
どこまでも無邪気でどこまでも前向きだ。
拓真はチョッピリ胸が痛んだ。
-ピコピコ
「それでは部活に行ってきます!」
慧・秀人・元気の3人が仰々しく体験入部に出発する。
「頑張ってくださ~い」
漣が手を振って見送る。
「行ってらっしゃい」
拓真も面倒くさそうに見送ってやる。
最初のコメントを投稿しよう!