秘密

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「練習が終わったら渡そうと思ってたんだけど、みんな忙しそうだから今渡すね」 漣は手紙を取り出した。 「土曜日のお礼。俺、何もお返し出来ないから、みんなに手紙を書いたんだ」 漣は土曜の夜と昨日の一日をかけて4人に手紙を書いた。 不自由な指で丁寧に心を込めて感謝の気持ちを綴った。 4人と出会ったことで今まで知らなかった世界を知り、諦めていたことにも挑戦できるようになった。 どんなに感謝しても足りない。 その思いを伝えたかった。 「漣くん。ありがとー」 秀人が漣に抱きつこうとしたが、 「漣くん。ありがとーーーーー!!!」 元気に先を越され、秀人は元気に抱きつく格好になってしまった。 席替えの明暗がクッキリと分かれた。 「漣くん。おいらたちも美術部に行ってみる?」 「走る練習をしたいからもうちょっとしてからにする」 入部の期限は今月末で体力測定と同じ日だ。 その日までに入部届を提出しなければ、学校側により適当に振り分けられてしまう。 漣はギリギリまで練習をして、1位を獲得後に入部届けを提出しようと考えている。 「分かった。今日はちょっと覗いてくるだけにするね。漣くんも入部希望ですって伝えておくよ。自主練頑張ってね」 「ん?自主練?あっ!そうだ!忘れてた!!タクくん、自主練のやり方教えて!!」 -ピコピコ 久しぶりに携帯ゲームを持ち出し熱中する拓真の腕を掴む。 「は?いやいや漣くん、おかしいでしょ。自主練ですよ!」 「やったことない」 「ほお。じゃあ自主練すれば“初めて”が経験出来ますね」 「頑張りますっ!!」 どこまでも無邪気でどこまでも前向きだ。 拓真はチョッピリ胸が痛んだ。 -ピコピコ 「それでは部活に行ってきます!」 慧・秀人・元気の3人が仰々しく体験入部に出発する。 「頑張ってくださ~い」 漣が手を振って見送る。 「行ってらっしゃい」 拓真も面倒くさそうに見送ってやる。
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