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「それ秀人くんが切ったの?」
漣の皿を覗き込む慧。
不揃いな切り口を見てふにゃっと笑った。
不器用な秀人がそれなりに奮闘したのだろうと想像できるだけに、微笑ましくて口元が綻ぶ。
「頭良いのにね。どーして不器用なんだろうね?めちゃくちゃ雑ぅーー!」
元気がケラケラと笑う。
「あのヘタレの不器用さは無敵です」
拓真のとどめの一言。
「あはっ。でも、俺よりは器用でしょ。ねっ?」
漣は笑いながらフォローをするがフォローになってない。
「漣くん。そういうのって笑えませんよ。自虐ネタキ・ン・シ!」
拓真が指で×印を作る。
「ふんっ!」
漣は機嫌を損ねてそっぽを向いた。
空気の変化を察した元気はわざと明るく言ってみる。
「ねぇねぇ。漣くん。やっぱり俺の持ってきたのも食べてよ!」
「はあ!?肉ばっかりそんなに食えるかよ!」
「じゃあさ。俺がシューちゃんの持ってきたのを1枚食べるから、漣くんは俺のを食べて!!ねっ!」
「う…ん」
漣は昔から元気には「イヤ」と言えない。
「はい。じゃあこれね」
元気は漣の皿に自分の皿から1枚移した。
そして漣の皿からも取ろうとしたが、そこにあるのは秀人が小間切れにした肉の欠片。
「ん…?これは何枚に切ってるんだ?漣くんご存知かな?」
「4等分」
肩を震わせて笑いを堪える。
「ああ!4等分ね。………ってこれ、大きさバラバラだよぉ」
元気は笑いながら「1・2・3・4」と数え、4切れをフォークに串刺した。
漣は元気と交換したローストビーフに目をやる。
「アリスちゃん。ナニこれ?4等分に切ってよ」
「えっ!?切るの?なんでぇ?大きいほうがウマイっしょ」
元気は持論を主張する。
「いや。どう考えても一口じゃ無理でしょ」
負けじと反論する漣。
2人のやり取りを見ていた慧が漣の皿を取った。
「4等分でいいんだね?」
慧は器用な手つきでキレイに4等分に切り分ける。
「さすがキャプテン!」
拓真は今でも慧のことを“キャプテン”と呼ぶことがある。
慧もそう呼ばれるのはキライではない。
「ほい。漣くん。これでいい?」
慧は眉を下げながら微笑み、漣の前に皿を戻した。
「サンキュー。やっぱリーダーは仕事が丁寧だね」
漣も微笑みを返す。
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