披露宴

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「うっひゃ~♪いただきまーす!」 元気はがぶっと一口でかぶりついた。 「うまい!!めっちゃうまいぃ!!ほらほら。みんなも食べなよ!」 一瞬で元気のテンションは頂点に到達した。 拓真と慧は品良く小さめに切った。 「うまい!」 「うめぇ!」 2人同時に叫ぶ。 タイミングが揃っている。 「やっぱり最上級のお肉は美味いや」 「美味すぎちゃう。5回位おかわりするよッ!」 「えー!?そんなにぃ?」 3人の様子を見ていた漣は笑いながらフォークを動かすが、上手く刺せない。 もう一度やってもまた肉が落ちる。 3度目のトライの後、やっと上手くフォークに刺さり漣の口へと運ばれた。 「うまい!!」 「でっしょ~!!俺が持ってきたやつだからスペシャルに美味いんだよ」 元気が目を細めて得意気な顔をする。 「ほんとぉだわぁ。めちゃうまぁ。でも、こいつ強敵だぞ」 漣はローストビーフに視線を戻す。 「漣くん。美味しいものを食べるには、それなりの試練も必要なんですよ」 拓真が諭すように言う。 「そーだな」 漣は次の1切れへのトライを始めた。 漣の左手の指はほとんど動かない。 唯一親指が動くので、その親指で挟み込むようにしてフォークを持つ。 関節が硬く強張った左手は常に痙攣が起き、時には漣の意志とは関係なく勝手に動くこともある。 また、右手の指は全ての関節が内側に曲がり、開くのが困難である。 右手首も上手くは動かせない。
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