披露宴

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「高校の時以来だね。こんなに明るいところで食べるのって」 元気は空を見上げた。 青い空には雲一つない。 「そうだね。卒業してからは、居酒屋とか薄暗い店とかばっかりだね」 慧の話し方は優しそうなゆっくりとした口調だ。 彼の周囲の時間もゆっくりと過ぎているような感じがあり、全体の雰囲気と相まって実に穏やかな青年である。 「そう言えばさ、タクとリーダーって昼は学食でしょ?」 「有栖川さん嫌味ですか?」 拓真は目線だけを元気の方に動かす。 「ごめん。そうじゃなくて、俺、自分のとこしか知らないから、他ってどんな学食があるのかなぁっと思って。ね!」 「食べることに関してだけは研究熱心ですね。まあ、俺のところは普通の学食ですよ」 「メニューは?どんなのがあるの?」 「だから。普通の大学の普通の学食ですってば」 拓真は一浪の末に有名国立大学に入学した。 元気に「嫌味ですか」と言ったのはそのためである。 「でも、レストランとかあるんでしょ。テレビで見たことあるもん」 「あるみたいですけど、俺は利用したことありません」 「なんだ。つまんないのぉ」 元気は少しスネた口調で言ってみた。 「そんなに興味あるんだったら来ればいいじゃないですか」 「えっ。行ってもいいの?タク案内してくれるの?いつ?いつ?」 元気のテンションは再び上昇気流に乗り上げた。
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