披露宴

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「俺も学食だけど。興味ない?」 未だにローストビーフと格闘中の漣が元気に声を掛ける。 「漣くん。いくら食べることしか能のない有栖川さんでも興味ないと思いますよ」 「そうだよね」 拓真の言葉に慧がかぶせる。 「タクちゃん!食べることしかってヒドイよぉ!!えっ!?ちょっと持って。漣くんって、お弁当じゃないの?」 「アリスちゃん。いつの話だよ?」 「だって。漣くんずーっと桃ちゃん特製のお弁当だったでしょ」 桃は漣の1歳違いの妹で、5人と同じ学校に通っていた。 彼らの母校は抜群の進学率を誇り、毎年有名大学への進学者数が全国でもトップの超名門校である。 中学部と高校部。 さらに男子校舎と女子校舎に分かれている。 桃は毎朝、漣と自分のお弁当を作っていた。 「桃なんて薄情なもんだよ。りんごの皮を剥いてって頼んだら、『皮ごと食べられるでしょ』って言うんだよ。そりゃね、デートに持っていくお弁当を作っている時に言った俺も悪いけどさ」 漣は拓真をチラリと見た。 「えーっ!?そりゃ桃ちゃんヒドいわ。漣くんが可哀想だよ」 元気はいつでも漣の味方だ。 入学以来ずっと漣を守りつつも甘やかしてきた。 「でもさぁ聞いてよ。デートに持って行くお弁当にはウサギの形に切ったリンゴが入ってたんだぜ」 「ははは。それで漣くんはどうしたんですか?」 口元をニッとさせる拓真。 「ウサギを喰ってやったんだよ!ざまあみろ~!」 「あぅ!」 勝ち誇った表情の漣とオーバーリアクション気味に崩れる拓真。 2人の関係は10年前まで遡る。 「へぇ。漣くん、学食デビューしたんだ。どう?」 「スッゴイんだぜぇ~!」 「えっ?何?何?何がスゴイの?」 元気の興味が漣の学食話に向いた。 「おぉ~!!食い付いてきたねぇ」 「うん!うん!」 元気は嬉しそうに頷くとグラスをテーブルに置き、両手を揃えて膝に乗せた。
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