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「はぁー。もぉ~!!チキショ~!!」
「漣くん、いつまでローフトビーフと戦ってるんですか?」
ちょっぴり赤ら顔の拓真が呆れたような顔をする。
「上手く刺せないんだよ!わかってんなら手伝えよ!」
イラつく漣を見ている拓真は、ニィっと笑みを浮かべてからグラスを置いた。
「イヤですよ」
「あん?おい!アクマ、覚えてろよ!」
久しぶりに“アクマ”と呼ばれた。
拓真は奮闘中の漣の顔を覗き込んでニコニコと笑う。
「あれは?フォークを差して手にぐるっと巻くやつ」
慧は漣が高校生の時に使っていた食事をする道具を思い出した。
「カフでしょ」
「あっ。それそれ!」
「使いたくないッ」
唇を尖らせて乱暴に言う。
「持ってるんだったら使いなよ」
「ヤダ!」
「意地張っても仕方ないでしょ」
「あんなの使わなくても大丈夫だもん」
こんな時の漣は頑固を貫き通す。
「小さく切るからだよ。だから言ったじゃん。ねぇ。貰っちゃうよー」
元気が横から一切れ奪い取る。
「う~ん。冷めてもうっめぇ!」
「おい!ちょっ。盗るなよ!」
「アリスちゃん。それ、漣くんのでしょ。食べたかったらもう一度並んでおいでよ」
慧は元気に席を立つように顎で促した。
「こっわー。はいはい。行ってきますよ」
「ははは。怒られてる。ついでにシャンパンも持ってきて下さいね」
「えーーー。なんでぇ!?」
拓真はギロっと元気を睨んだ。
背筋が凍りついた元気は、飛び跳ねるように席を立つ。
(今日はタクに逆らったら殺されちゃうな)
「タクもいけないよ。漣くんに謝りなよ」
慧は困惑気味に眉をハの字にさせる。
「なんでだよぉ」
慧に叱られた拓真の機嫌が傾いた。
「そーだよ。謝れ!謝れ!」
「漣くんもだよ!イライラするからって、タクに当たったりしちゃダメでしょ」
慧は拓真と漣の顔を見て、厳しいながらも優しく叱った。
こんな時はリーダーシップを発揮する。
「ごめんなさい」
先に折れたのは拓真だ。
「タク。ごめんね」
漣も照れくさそうに謝る。
慧は笑顔で二人を見る。
「それじゃあ、仲直りの握手して」
漣が右手を拓真の方に向けると、拓真は両手で漣の手を掴み上下に振った。
「もうケンカしちゃダメだよ」
いつまでも手のかかる子達だなぁと慧は思うが、そんな2人の関係も微笑ましく見守っている。
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