披露宴

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「漣くん。冷めちゃったね」 慧はフォークを握っている漣の左手を挟むようにして自分の両手を添え、そのままゆっくりとローストビーフを刺した。 「おぉ!リーダー。サンキュー」 刺し終えると慧は手を離し、漣は自分で口に運んだ。 「ふふっ。これっていつもシュートくんがやってたよね。おいら、あんまり上手くできなくて。ごめんね」 慧は照れながらふにゃっとした笑顔を漣に向ける。 「そんなことないって。感謝してるよ。ありがと」 漣も照れながら慧に頭を下げた。 フォークやスプーンで食事をするのが漣のスタイルだ。 指が動かないのでゆっくりではあるが、姿勢を正して丁寧に食事をするように心掛けている。 自宅では、握りやすいように工夫されたグリップの太い物を使うので、不自由を感じることは少ない。 しかし、今日のように柄の細いフォークは指が震えるせいで握り難い。 そのため上手く食事が出来ない。 そんな漣をさりげなくサポートしてきたのが秀人だった。 自分で出来ることは漣にやらせて、限界になったところで出来ない部分だけを手伝うようにしていた。 学生時代に漣をサポートする秀人をずっと見てきた慧だから、今のようにさりげなく振舞えるのだ。 『上手くできなくてごめん』と言ったのも、この男らしい照れである。
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