お受験への道-元気篇

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眠れない日が続いている。 今朝も早く目が覚めた。 食欲がない。 髪型も気になる。 そう。元気は恋をしたのだ。 「今日こそは思い切って告白しよう!」 意気込むものの、いざ彼女の顔を見ると勇気が出ない。 普段はフルテンションの元気だが、今はすっかり恋する小兎ちゃんなのだ。 「今日は絶対に告るぞ!」 放課後、元気は図書室に向かった。 「絶対、上手くいく!」 自分に言い聞かせて拳に力を入れる。 「あの…彩ちゃん」 「あっ!有栖川君。どうしたの?」 「あの。彩ちゃん。僕と……付き合って下さい!」 (言っちゃった!) 元気は下げた頭を少し上に向け、彩の様子を伺う。 「ごめんなさい」 「えっ?えっーーーーーー!!!」 彩はためらいながら口を開いた。 「有栖川君は、人気あるし、カッコイイし好きです」 「だったら…」 「私ね薫風中学を受験するの。だからそれまでは恋愛とか考えられないの。ごめんね」 「そんなぁ……」 当たって砕け散った。 元気10歳の冬の日の出来事だった。 「ふられちゃった。しょっくぅぅぅっ」 元気の初恋はあっけなく終わった。 しかし、次の瞬間、元気は閃いたのだ。 「そうだ!俺もくんぷー中学に行こう!!彩ちゃんも俺のこと好きだって言ってたし、いいんじゃね?」 こうして元気は初恋の彼女に人生のレールを預けてしまったのだ。 「でも、くんぷー中学ってどこ?聞いたことないよ。もしかして女子校?なーんつってね。うひゃ」 元気は知らなかった。 薫風中学が超名門進学校で、運動は出来るが勉強となると中の下である元気なんかが逆立ちしても合格できるような学校ではないことを。 しかし、元気にとってはどうでもよいことだった。 彩ちゃんと一緒ならそれでいいのだ。
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