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全ての科目が終了した。
元気は借りた筆記具を隣の男の子に返し、何度もお礼を言う。
「ありがとう。ありがとう」
今日だけで2度も彼に助けられた。
元気には彼が天使に見える。
「お役に立てて嬉しいよ」
「俺も嬉しいっ!」
元気はこの男の子との出会いがとても大切なものになると感じていた。
「おぉ!余裕だわ」
元気は先程からメモと時計を交互に見ている。
「どうしたの?」
「俺、一人で東京に来たの初めてで、迷ったら大変だから、母ちゃんが電車の時間を調べてくれたの」
元気は母が書いたメモを見せた。
「ここからどうやって帰るの?」
「えーっとね。目黒に行って東京でもう一回乗り換えて家に帰るの。他にも方法があるかもしれないけど簡単じゃないと分からないから」
「ありすがわくん偉いね」
「そう?」
元気は嬉しかった。
初めての冒険で心細かったが、褒められたことで自信がついた。
元気はコートを着てマフラーを巻き、かばんから携帯カイロを取り出し防寒対策を万全に整えた。
「あっ、そうだ!これ使って。今日のお礼にね」
元気は男の子に携帯カイロを差し出した。
「大丈夫だよ。家近いからね」
「そんなに近いの?」
「ありすがわくんだったら10分位で着いちゃうよ。合格したら泊まりに来てね」
「うん!絶対に合格しようね」
男の子は椅子に座ったままコートを着て、カバンを肩から斜めに掛けた。
「まだ、帰らないの?」
帰り支度を終えた元気は男の子に声を掛ける。
「友達が来るから待ってるんだ」
「友達?」
「同じ学校の友達なんだけど、ちょっと遅いよね」
教室に残っている受験生は数人に減ってきた。
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