お受験への道-慧篇

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多くの歯科が開業している銀座の中でも、『ブリリアント歯科クリニック』は若い女性を中心に大人気だ。 雑誌の特集などで目にすることも多い。 院長の織作光は温厚な人物で、それがまたこのクリニックの人気の一つなのかもしれない。 院長には高校生の娘と小学生の息子がいる。 娘の菜奈がオーストラリアに留学して2年になる。 獣医になりたいそうだ。 出来ることなら歯科医を目指してほしいのだが、同じ医学の道を選んでくれただけで嬉しいと思う。 今日も光は海の向こうで学ぶ娘の無事を祈る。 息子の慧は絵を描くのが好きで、授業中も教科書やノートの端に落書きをしているような子供だ。 最近はストーリーのあるパラパラ漫画なども描くようになった。 絵を描くことや粘土細工が好きだが、友達に見せるわけではない。 出来上がった作品は自分の部屋に並べているだけだ。 自分の世界があり、積極的に他人と交わるタイプではない。 全てにおいてマイペースな慧は、一見すると周囲の様子に関心が無いように思われがちだが、物事の本質を見抜く能力はずば抜けている。 慧は教育大学附属小学校の6年生。 毎朝7:00前には家を出る。 電車通学は5年経ってもまだ慣れない。 そのせいかいつも眠そうな顔をしている。
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