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合格発表当日。
「あったぁ」
慧は掲示板に自分の番号を確認すると、ふにゃりと笑った。
ふと横を見ると、
「もしもし。母ちゃん。合格したよ。俺、やったよ!」
電話を握りしめて泣きじゃくる男の子がいる。
「うわっ。テンション高っ」
慧は顔をしかめた。
男の子は電話を切っても、まだ泣いている。
慧は男の子にハンカチを差し出した。
「涙拭きなよ」
「ありがとぉ!!!俺、絶対に落ちると思ってたから嬉しくってぇ!!!」
そう言うと男の子は、慧のハンカチでチュンと鼻をかんだ。
「あっ!!」
慧はとっさに叫んだ。
「あっ。ごめんなさい」
男の子は慌てて慧にハンカチを渡す。
「いらないよ」
慧は呆れたように言ったがハンカチは祖父に買ってもらった。
青のブランドハンカチは、小学生の慧にとっては大人の持ち物であり、ハンカチを持つ自分が少し“オトナ”になったような気がした。
本当は、お気に入りのハンカチなのだ。
「君も…合格…したの?」
男の子は探るように慧を見る。
「したよ」
男の子の顔がパッと明るくなった。
「じゃあ。洗濯して入学式の時に返すね」
「だから、いらないって」
慧は思った。
おいら、この子苦手だな。
同じクラスになりたくないな。
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