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新納法律事務所。
所長の新納勇真は『弱き庶民の味方』をキャッチフレーズに、ここ銀座で40年の長きに渡り庶民派の弁護士として活動している。
還暦を機に事務所の実務を息子に譲ったが、生涯を法務に捧げるつもりだ。
勇真の息子つまり拓真の父である和真はテレビなどのメディアに出演している。
事務所の実務を譲り受けてからテレビに出演する回数は少なくなったが、イケメン弁護士としての人気は健在だ。
「こんにちはぁ!」
拓真は笑顔で事務所のドアを開けた。
「おお。拓真。よく来たな」
勇真が笑顔で拓真を迎え入れる。
「おじいちゃん。こんにちは」
拓真は満面の笑顔で挨拶をした。
「予約を入れておいたから先に行っておいで。その後で買い物に行こう。今日は拓真の好きなものをなんでも買ってやるぞ」
「何階に行けばいいの?」
「3Fだよ。ランドセルは置いて行きなさい。お金は後でおじいちゃんが払っておくから、拓真は何も心配しなくてもいいからな」
「ありがとう。3Fだね。行ってきます」
エレベーターで3Fに降りる。
学校の歯科検診で虫歯が見つかり、勇真の勧める歯科で治療することになったのだ。
「ここまで来るの面倒だな」
拓真は呟いた。
拓真は勇真が苦手だ。
子供心に逆らえないと思っている。
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