お受験への道-秀人篇

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ヒースロー空港を離陸して12時間。 飛行機は新東京国際空港に到着した。 憧れ続けていた日本に、ようやく帰ってきた。 「暑っ!」 数年ぶりの日本の夏。 湿度の高さに不快感を覚え、汗を拭いながらも心は弾む。 期待を胸に新居へと向かう。 明日から2学期。 秀人は地元の小学校に転入する。 中学は私立に行くつもりなので、友達になってもすぐに離れてしまう。 だからこそ、一つでも多く楽しい思い出が出来ればいいなぁと思うのだ。 今夜は、なかなか眠れそうにない。 転入生の秀人のまわりには多くの子供が集まり、たくさんの友達ができた。 秀人は毎日のようにイギリスでの生活を語り写真を見せる。 秀人の語る遠い外国の話が子供たちの興味を刺激する。 秀人はすぐにクラスに打ち解けた。 背は低いがルックスは抜群。 英語がペラペラで頭もいい。 爽やかな王子様キャラ。 転入初日からファンクラブができるくらいに、とにかく女の子に人気があった。 学校のドコにいても、熱い視線を感じる。 イギリスにいた時に想像していた、おしとやかな日本女性のイメージとのギャップに苦笑する。 日本の学校は不思議なものが多かった。 壁一面に貼ってあるクラス全員の書道の文字が全部同じなのだ。 水彩画は、これまた校内の写生であろうか、体育館と校舎ばかりが描かれている。 「おっ!これ好きかも」 それは、花壇を描いた紫陽花の絵だった。 秀人は校舎も体育館も描かれていないこの絵が気に入った。
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