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漣はベッドから起き上がり着替えを始める。
昨夜は一睡もできなかった。
金属の支柱がついた装具を手に取る。
「今日から2学期だよ。また、よろしくね」
そう言うと両方の下肢に重い装具を取り付ける。
右手の指の動きが少しぎこちない。
着替えを終えると自らを鼓舞するようにトントンと胸を叩く。
深呼吸をし、「よしっ!」と言って杖を突いて立ち上がった。
漣は2ヶ月前に両足の手術を受けた。
もう何度目の手術なのか漣本人もわからない。
漣は両足の自由が利かない。
装具か杖がなければ立つことも出来ない。
右腕も少し不自由だ。
生まれた時から不自由なのだから、漣にとってはそれが普通だった。
教育委員会は養護学校への入学をすすめたが、両親の強い希望により地元の小学校に入学した。
成績は非常に優秀で、周りの助けもあり不自由ながらも学校生活を送ってきた。
漣にとって学校は居心地の良い場所ではない。
身体を揺らしながら歩く漣の歩き方を真似る子がいる。
心無い言葉に傷ついたこともある。
金属製の装具は“ロボットの足”とからかわれる。
足元を蹴られ、倒された回数は数えきれない。
その都度、不自由な足を恨めしく思った。
だがしかし、漣はただの一度もイジメっ子達からは逃げなかった。
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