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4年生から杖を使うようになった。
この頃から自分の障害と向き合い、自由にならないもどかしさや将来に対する不安、いずれ歩けなくなる恐怖などが漣を苦しめた。
自分の部屋で一人、家族に内緒で杖を使わずに歩く練習をした。
何度も転んだが根気よく続けた。
そんなある日、転んだ拍子に右手の親指を骨折してしまった。
漣は6年生になった。
新しいクラスでもどこか浮いている。
周りに馴染めない自分がいけないのだと自分自身を責めるようになっていた。
もし障害が無かったら……。
つい、そんなことを考えてしまうのだ。
そんなある日の放課後に事件は起きた。
杖を突いて立ち上がった次の瞬間、足元を蹴られバランスを崩して倒れた。
イジメっ子達は杖を取り上げた。
「ヤーイ。ロボットの足ぃ」
いつものことだ。
昔から足のことでからかわれていた。
それを助けてくれる子がいる。
「大丈夫?」と言って肩を貸してくれる子がいる。
杖を持ってきてくれる子がいる。
そんなクラスメートに助けられてきた。
次の日。
登校した漣はクラスの様子がいつもと違うことに気付いた。
昨日イジメっ子達から助けてくれた3人が、漣を避けるようになっていたのだ。
その次の日は、漣と比較的仲良くしている別の子がよそよそしい態度をとった。
そして、また次の日も。
漣に味方をしたことでイジメの標的にされるのを恐れた子供達が、漣をイジメる側へと立ち位置を変えたのだ。
キモい。
汚い。
近づくと病気がうつる。
口をきけば死ぬ。
子供たちの間にそんな噂が広まった。
教師達はイジメの存在に気付かないフリを続ける。
クラス全員から無視され、教師達からも見放され、漣は完全に孤立した。
そして、漣は笑わなくなっていた。
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