お受験への道-漣篇

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夏休みに受けた手術のため、他の子供達より2週間遅れて新学期を迎えた。 学校に行きたくない。 このままずっと入院していたい…。 イジメは入学して間もなくの頃からあったが、一部のイジメっ子達が悪のりしていたにすぎなかった。 今のようにクラス全員から無視されていることは、家族に知られたくない。 両親に心配を掛けたくない。 だから自分の気持ちを閉じ込めた。 2ヶ月ぶりの登校。 漣は勇気を出した。 「おはよう」 「…………」 誰も漣の挨拶に応えなかった。 その日は誰も話しかけてこなかった。 クラスメート達は、漣の存在そのものを受け入れてくれないようだ。 転入生がいる事に気付いた。 明るく笑う彼の笑顔が眩しい。 優しそうな瞳に安らぎを覚える。 だが、彼も漣に声を掛けてはこない。 イジメは続いている。 帰宅途中、イジメっ子達に囲まれカバンを取り上げられた。 必死に抵抗するが、イジメっ子達は財布からお金を抜き取り、カバンの中の物を路上にばらまいた。 そのうちの一人が教科書を拾い上げると、近くにあったコンビニのゴミ箱に投げ入れ、笑いながら立ち去った。 漣はカバンを拾い肩に掛けた。 そして片方だけ杖を突き、ばらまかれたものを拾ってカバンに入れた。 ゴミ箱から取り出した教科書にはソースのシミがついていた。 怒りと悔しさがこみ上げてきたが泣かなかった。 泣くと負けを認めることになる。 どんな仕打ちを受けても決して泣かなかった。
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