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漣を追いつめるのはイジメっ子達だけではない。
「汚いから」
そう言って、掃除当番は漣の机だけ教室の後ろに置き去りにした。
漣は自分で机を運んだ。
僅か1メートルちょっと移動させるだけだが、両手で杖を突く漣にとっては困難な作業だった。
杖を外して床に座りこみ、力を入れて机を引き寄せた。
そしてお尻をついて後ろにさがり、また机を引き寄せた。
別の日の昼休み。
刃物で切り裂かれた絵が黒板に貼られた。
図工の時間に漣が描いた紫陽花の絵だ。
漣は黒板に向かうが、机と机の間は狭くて杖が引っかかって歩きにくい。
バランスを崩し、そこにいた女の子に倒れ掛かってしまった。
「きゃぁ。汚い!」
倒れ掛けられた子が叫んだ。
「ごめん…な…さい…」
小さな声しか出てこない。
「消毒してくる」
そう言って女の子は漣を睨みつけ教室から出て行った。
漣は女の子の後ろ姿を見つめ唇を噛みしめた。
黒板の絵を剥がして屑かごに捨て、自分の席へと向かう。
-ガタン
また、足を引っ掛けられた。
取り上げられた杖は数メートル先に放り投げられた。
漣は這って杖に向かった。
もう少しのところで、また反対方向に杖を投げられた。
とうとう涙が零れた。
もう限界だった。
「汚い…ロボット…消毒…」
力なく呟くと動けなくなった。
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