お受験への道-漣篇

5/7
前へ
/201ページ
次へ
漣を追いつめるのはイジメっ子達だけではない。 「汚いから」 そう言って、掃除当番は漣の机だけ教室の後ろに置き去りにした。 漣は自分で机を運んだ。 僅か1メートルちょっと移動させるだけだが、両手で杖を突く漣にとっては困難な作業だった。 杖を外して床に座りこみ、力を入れて机を引き寄せた。 そしてお尻をついて後ろにさがり、また机を引き寄せた。 別の日の昼休み。 刃物で切り裂かれた絵が黒板に貼られた。 図工の時間に漣が描いた紫陽花の絵だ。 漣は黒板に向かうが、机と机の間は狭くて杖が引っかかって歩きにくい。 バランスを崩し、そこにいた女の子に倒れ掛かってしまった。 「きゃぁ。汚い!」 倒れ掛けられた子が叫んだ。 「ごめん…な…さい…」 小さな声しか出てこない。 「消毒してくる」 そう言って女の子は漣を睨みつけ教室から出て行った。 漣は女の子の後ろ姿を見つめ唇を噛みしめた。 黒板の絵を剥がして屑かごに捨て、自分の席へと向かう。 -ガタン また、足を引っ掛けられた。 取り上げられた杖は数メートル先に放り投げられた。 漣は這って杖に向かった。 もう少しのところで、また反対方向に杖を投げられた。 とうとう涙が零れた。 もう限界だった。 「汚い…ロボット…消毒…」 力なく呟くと動けなくなった。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加