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「いいかげんにしろよ!」
秀人はクラス全員を相手に宣戦布告した。
卒業まで平穏無事に過ごしたいとの秀人の願いは叶えられそうにないが、気分は爽快だ。
秀人は今日の出来事を思い返していた。
「そろそろ帰ろっかな」
秀人は席を立ち窓際に向かう。
「漣くん。一緒に帰ろ」
秀人は周りの子達が言うように、漣を汚いとも恐いとも思ったことはなかった。
ただ、漣とどのように接すれば良いのかが分からなかったのだ。
声を掛けようと何度も思ったが、その都度不自由な足に目が行く。
痛いのだろうか。
感覚はあるのだろうか。
考えばかりが先走り、漣と関わることに躊躇していたのだ。
「ねえ。一緒に帰ろうよ」
正面から漣の顔を覗き込む。
「え?あの…」
漣は戸惑い下を向く。
今まで「一緒に帰ろう」と声を掛けられたことなんてないのだ。
「漣くんと話したいこと、た~っくさんあるしね。そーだ!俺の家に来る?」
「あ。えと…」
「いきなりは無理か。じゃあ、俺が漣くんの家に遊びに行っていい?漣くんちドコ?」
「公園の近く」
ようやく顔をあげ秀人を見る。
「俺んちと近いじゃん!学校から10分くらいでしょ?」
「30分」
「えっ!?ドコの公園?」
「ふふっ。俺、歩くの遅いんだけど。忘れてた?」
漣はキレイな笑顔を見せた。
「漣くんの笑った顔、初めて見たよ」
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