お受験への道-秀人&漣篇

3/8
前へ
/201ページ
次へ
-カツーン カツ-ン 秀人は漣の歩みに合わせてゆっくりと歩く。 杖と装具が軋む不規則な金属音が、秀人には優しく聞こえる。 漣は杖を前に突き、続いて左右の足をゆっくりと交互に出す。 足が着地する度に身体が上下に弾む。 右足を着く時には大きく左にも傾く。 「俺の歩き方ヘンでしょ?」 「そう…かな…?」 「ふふっ。秀人くんって嘘つけないよね?」 「英国紳士だからね」 秀人はシルクハットを被るフリをした。 笑顔で秀人を見つめる漣は、視線を自分の足に落とす。 「俺ね。生まれた時からこんななんだ。筋肉がきちんと成長できないんだってさ。筋肉が固まって、関節が硬くなっていくんだ」 秀人は漣の足を見る。 両膝が前に曲がったままの状態で爪先で立っている。 右膝はさらに内側にも曲がっている。 「真っ直ぐ伸ばせないんだ。足首はカチカチだから踵が地面に着かないし。やっぱりヘンだよ」 「痛い?」 「雨の日とか冬とか、寒いとたまにね。でも、もう慣れた」 「マッサージしてあげるよ!」 「秀人くんって優しいんだね」 「英国紳士だからね」
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加