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-カツーン カツ-ン
秀人は漣の歩みに合わせてゆっくりと歩く。
杖と装具が軋む不規則な金属音が、秀人には優しく聞こえる。
漣は杖を前に突き、続いて左右の足をゆっくりと交互に出す。
足が着地する度に身体が上下に弾む。
右足を着く時には大きく左にも傾く。
「俺の歩き方ヘンでしょ?」
「そう…かな…?」
「ふふっ。秀人くんって嘘つけないよね?」
「英国紳士だからね」
秀人はシルクハットを被るフリをした。
笑顔で秀人を見つめる漣は、視線を自分の足に落とす。
「俺ね。生まれた時からこんななんだ。筋肉がきちんと成長できないんだってさ。筋肉が固まって、関節が硬くなっていくんだ」
秀人は漣の足を見る。
両膝が前に曲がったままの状態で爪先で立っている。
右膝はさらに内側にも曲がっている。
「真っ直ぐ伸ばせないんだ。足首はカチカチだから踵が地面に着かないし。やっぱりヘンだよ」
「痛い?」
「雨の日とか冬とか、寒いとたまにね。でも、もう慣れた」
「マッサージしてあげるよ!」
「秀人くんって優しいんだね」
「英国紳士だからね」
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