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公園に着いた。
漣は学校を出た時よりも辛そうな表情になってきた。
「漣くん。少し休もうか?」
2人はベンチに腰を掛ける。
「ごめんね。俺、長く歩けないんだ」
「無理しちゃった?」
「大丈夫。いつもここで休むんだよ」
長いと言っても500メートル程の距離。
秀人は時計を見た。
ここまで20分もかかっている。
秀人は漣の杖を見る。
ガッチリと丈夫そうだが、細身の漣には重そうに感じる。
「車椅子は使わないの?」
「え?」
「歩くの大変でしょ。車椅子の方がラクじゃないかと思うんだけど」
「使うよ。俺、もうすぐ歩けなくなるから」
「もうすぐって?」
「半年くらいかな。一年はムリだと思う」
秀人は漣の足にそっと手を触れた。
「怖くないの?」
「ちょっとね。でも、もう、焦っても仕方ないし」
秀人が漣の顔を見ると穏やかな瞳が優しく光った。
(強いなぁ。)
この時、秀人には漣が眩しく見えた。
「俺ね、歩いていた時のことを覚えておきたいんだ。だから、歩けるうちは、こいつらとたくさん歩くって決めたんだよ。カストルとポルックスとね」
「誰?」
「こいつ」
漣が2本の杖を指す。
「えっ?杖?」
「うん」
漣は笑いながらコクリと頷いた。
「それから、右がベカで左がアルタイルね」
次に両足の装具を見せた。
「あっはっはっ。面白い。お腹痛いよ」
秀人は笑いが止まらない。
「妹が付けたんだよ」
「面白いね。妹って何年?」
「5年」
「何組?」
「慶明に行ってるから会えないよ。残念だね」
「なんだぁ。会いたいなぁ。可愛い?」
「どーかな?」
「名前は?」
「桃」
「漣くん。モモちゃんに会いたいよぉ」
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