1000人が本棚に入れています
本棚に追加
秀人は話題を変えた。
「俺、薫風を受験するんだ。父さんがそうしろって」
「薫風!?スゴイじゃん!頑張ってね。俺は、養護学校に行くと思う」
「イジメのせい?」
「それもあるけど、車椅子になったら普通校は大変だしね」
「そっか」
もうすぐ歩けなくなると漣は言った。
その時を迎える覚悟が出来ているとも言った。
辛い思いもたくさんあるだろうに、どうしてそんなに穏やかな表情が出来るのだろう。
自分と同じ歳なのに…。
秀人は漣にかける言葉を探している。
そして漣は、そんな秀人の横顔を眺めている。
「秀人くん。俺の家は、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも薫風で、桃も薫風に行きたいって頑張ってるよ」
「そうなの?だったら漣くんも薫風に行こうよ!」
漣は首を横に振った。
「秀人くん。養護学校だったら、俺なんかでも普通になれるかな…」
寂しそうな声が秀人の心を痛くする。
最初のコメントを投稿しよう!