お受験への道-秀人&漣篇

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「いつから、イジメられてたの?」 「1年」 「え!?そんなに前から?」 秀人は驚いて目を大きく見開いた。 「掃除当番や給食当番の時にラクをしていて不公平だって」 「それは違うでしょ」 「違わないよ。俺ができない分は、誰かがやらなきゃいけないんだよ。やっぱり不公平だよね」 「そんなのおかしいよ」 やっぱり何かが間違っている。 イギリス育ちの秀人には、日本の学校事情は理解し難いところがある。 それでも間違いは間違いだ。 「もしかして、茉森君のお世話当番って…」 「教室の移動とか給食とか手伝ってくれる。俺、両クラッチで手が使えないからね」 秀人は当番表を見ていた時の事を思い出した。 「当番って…なんかイヤな言葉だな。どうせ、手伝ってくれないんだろ?」 口調に怒りが見える。 「給食を持ってきてくれるよ」 「それは先生がいるからだよ。教室の移動は?」 「教科書なんて、カバンに入れて肩に掛ければいいんだよ」 「なんだよそれ」 「それでいいんだよ」 漣が良くても秀人は腑に落ちない。 「よし!俺が明日から漣くんのお手伝いをするよ。だから、お世話当番なんか要らないって言ってやりなよ。ね!」 「秀人くん…」 優しい笑顔の秀人。 細めた瞳から温もりが溢れる。 「バトラーって呼んでよ!」 「バトラー?あぁ!執事だね」 「誓いの握手!」 秀人が手を出す。 「うん!」 漣は秀人の手をぎこちない動きで握り返した。 「!?…漣くん…手も?」 「右手もちょっとね。指に力が入りにくいんだ。まともなのは左手だけ」 握っていた手を離し秀人から視線を外す。 その手を掴む秀人。 「漣くん。頑張ろうね!」 今度は漣の両手を強く握りしめた。 この手を離しちゃいけない! 秀人の胸にある感情が芽生えた。
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