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「よいしょ!」
漣が杖を突いて立ち上がった。
わずかながら漣を見上げる秀人。
目線の高さが近い。
「漣くんって何センチ?」
「4月の健康診断の時は145。あっ、でも、膝が伸びていたら150はあるハズだよ。」
「その分、爪先で立ってるからイーブンだよ」
「ひっどいなぁ。秀人くんってさ、ホントに英国紳士なの?つーか。英国紳士の使い方間違ってない?」
「ないない」
秀人はケラケラと笑った。
-カツーン カツ-ン
「秀人くんは何センチ?」
「……。」
「140ないよね」
漣はクスっと笑ってイジワルっぽく言った。
「ある…よ」
「ないでしょ。だって俺の肩よりちょっと上ぐらいだよ」
「漣くんが肩を上げて歩くからだよ!」
「あ。それ言うんだ!?」
「本当のことだろ!」
自分で振っておきながら、身長の話題は秀人のコンプレックスを刺激する。
「杖を突くから肩に力が入るんだよ。上がっていても仕方ないだろ。撫で肩の秀人くんには言われたくないよ」
「ナデガタァ!?それ言うなよぉ」
-カツーン カツ-ン
「秀人くん。さっきのありがと」
「え?」
「バトラー」
「ああ。だって俺たち、友達でしょ」
秀人はニッコリ笑った。
この時の二人の身長差は8センチ。
秀人の頭は、漣の肩よりも少し上の高さだった。
翌日から、秀人は漣と一緒に過ごした。
教室移動も給食も机を運ぶのも、秀人は漣の全てをサポートした。
イジメは無くならなかったが、秀人の存在が漣の心を自由にしていった。
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