1000人が本棚に入れています
本棚に追加
漣は秀人から体を離した。
「秀人くん。俺からもプレゼントがあるんだ」
そう言って額に入った絵を渡す。
「これ…俺だよね?」
「うん」
「ありがとぉぉ」
漣は秀人の似顔絵を描いた。
鉛筆で精密に描き上げられた秀人は穏やかな優しい瞳をしている。
「俺、こんなに優しくないでしょ?」
「ナニ言ってんのさ。もっと優しいよ」
秀人は漣の右手を見る。
公園で握手をした時よりも握力が弱くなっている。
「漣くん。無理しちゃダメだよ」
「大丈夫だよ。俺ね。将来は絵の仕事がやりたいんだ」
「絵描き?」
「できれば…」
秀人の絵を見つめながら遠慮がちに言ってみる。
「そんなに好きなんだ」
「俺、こんなだし。自分で出来ること少ないし。でもね、絵を描いていると、こんな自分でも認めてあげたくなるんだ。ヘンかな?」
「ヘンじゃないよ。漣くんはきっと有名な画家になるよ」
秀人は自分の似顔絵を両手で高く掲げてみた。
「有名になったら、また秀人くんを描くね」
「約束だからな!」
「今日は約束ばかりだね」
漣は、この約束も守れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!