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元気はシャンパンに飽きてきた。
「俺、ワイン取ってくる。リーダーとタクはまだシャンパン?」
慧と拓真が同じタイミングでコクンと頷く。
「アリスちゃん。俺も!」
「オッケー!オレンジジュースだよね」
「ナニ言ってんの。ワインちょうだいよ」
「えっ!?漣くんお酒飲むの?」
「飲むよ。二十歳過ぎてんだから問題ないっしょ」
漣はこのメンバーで食事をする時はいつもオレンジジュースだが、今日は少しだけお酒を飲んでみたくなった。
「漣くん。気をつけて下さいよ。飲酒運転なんてシャレにならないですからね」
「運転?」
キョトンとした顔の漣を見ながら拓真はクスクスと笑う。
「漣くん、これだよ」
慧がトントンと車椅子を叩いた。
「ああ!!なるほどね。ふふっ。はいはい。気をつけます」
(運転ね。タクらしいな)
漣は拓真独特のユーモアのセンスが好きだったりする。
でも拓真には好きとは言わない。
元気がグラスを抱えて戻ってきた。
「リーダーとタクはシャンパンね。さっきも俺が行ったんだから、今度はタクが行ってよ」
「はいはい」
とりあえず返事だけする。
言葉に重みは無い。
「アリスちゃん。は~やくっ!は~やくっ!」
漣が瞳をキラキラさせてワインを催促する。
「はいはい。ちょっと待ってね」
元気はグラスにストローを挿した。
「飲ませてあげよっか?」
「いいから早くここに置けよ」
顎で指図する漣。
-コトッ
元気は漣の前にグラスを置いた。
漣が上体を前に出しストローを銜えようとすると、元気はグラスを取り上げた。
「おい!アリバカッ!」
「うふふッ」
元気はニコニコしながら、漣の顔の前にグラスを持っていく。
「ほら。あーんして」
「バーカ」
漣は笑いながら「あーん」と口を開ける。
「うまい!アリスちゃんも飲みなよ」
「うん!!」
元気は手に持っている漣のワインに口をつけた。
「うんめぇ~」
「ね!!美味いだろ。アリスちゃん、おつまみがほしいなぁ」
「持ってくるね」
元気はまた席を立った。
「俺には、行け!って言ったのに、なんなんだよぉ」
「ありゃ完全にパシリだな」
元気の後ろ姿を見ていると、次第に笑いがこみ上がる慧。
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