再び披露宴

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元気が戻ってきた。 「アリスちゃん。ワインもう一つ貰ってきて」 「シャンパンも2つよろしく」 「ぶぅー!」 それでも元気はご機嫌だ。 元気は中学に入学した日からずっと漣に甘かった。 すぐに手を貸すのは漣の為にならないと分かってはいるのだが、あれやこれやと手を出してしまうのだ。 一方の拓真は手を貸すことはほとんどない。 そこまで厳しくすることもないと自分でも思うのだが、3人が甘やかすので敢えて厳しく接してきた。 甘い元気と厳しい拓真。 両極端だがバランスが良い。 手足に重い障害を抱える漣にとって、他人の手助けが無ければ、社会生活を送るのは困難である。 元気のように何でも助けてくれるのは非常にありがたく感謝しているのだが、世話になる身として、一歩下がったところに自分を置いている。 みんなとは対等に付き合えない…。 漣は自分から壁を作り、その壁からこちら側の世界を頑なに守っている。 誰もそんなことは微塵も思ってはいないのだが、漣はずっとそう感じてきた。 拓真のように少々荒っぽい扱いを受けるのは、漣自身の気持ちをリセットさせる為にも必要な要素なのである。 漣本人も拓真が拒否することを承知して仕掛けているのだ。 拓真にしても、漣の考えくらい理解している。 突き放すような事を言いながらも、本当に必要な時は手を貸している。 表現は違うが、みんな漣を特別に扱うことなく、障害があってもなくても、ひとりの人間として、学生時代を共に過ごし、友情を築いてきた。 漣が負い目を感じていることも、対等な付き合いが出来ないと思っていることも、いたいほどよく分かる。 慧も秀人も元気も拓真も、漣の笑顔や不自由な手足、全てをひっくるめて、漣を愛し必要としているのだ。
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