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「有栖川さん。ふつうおつまみって、チーズやクラッカーじゃないんですか?」
「ピザにパスタにグラタンにハンバーグに唐揚げって。こんなに食えるかよ!」
「だって、たくさん食べてほしかったんだもん」
拓真と漣に責め立てられ、元気はヘコんでいる。
「いいじゃん。みんなで食べようよ。おいらグラタンもらうね。タクもハンバーグもらいなよ。好きだろ」
「そうですね」
慧の言うことには従ってしまう。
慧は小皿にハンバーグを取り分けて拓真に渡した。
「リーダーもタクも甘すぎ!」
元気に一番甘い漣が言ってもイマイチ説得力がない。
漣はピザに手を伸ばした。
左手の親指でピザを軽く半分に折り、親指と人差し指で挟むまでは上手くいったが、持ち上げようとするとピザが反り返り、トッピングの具材が滑り落ちた。
「あーもう!ムカつく!!」
漣は持っているピザを振り落とし、食べるのを止めてしまった。
ワインを飲んだが気分は晴れない。
「アリスちゃん。ピザ食べたい」
漣はふくれっ面のまま元気に声を掛けた。
元気は待ってましたとばかりにニコッと笑う。
「おっけえ。あーんして」
元気は食べやすいように、ピザの先を少し丸めて漣の口に入れた。
「熱っ!」
漣はハフハフしながら先の方にかぶりつく。
「ほいひぃ~!」
「ホント?嬉しいな」
元気は美味しそうに食べる漣の顔が好きだ。
何気ない表情が懐かしい。
元気はタイミングを見計らって続きを漣の口に運んだ。
「あづぅ」
漣は昔から熱いものと辛いものが苦手だ。
時折見せる幼い頃の面影。
元気の記憶の漣は、今も昔もさほど変わっていない。
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